I LOVE YOUが聴きたくて
怜樹は、目を丸くした。
老人に、心の内を見透かされた気がした。


「まぁ、何か悩んでおるのかどうかは、知らんがのう」

老人は、怜樹を見て、目を細めて微笑んだ。

怜樹は、老人の方を見ながら、真面目な顔で心が落ち着いた表情でいた。

「ありがとう…おじいさん」

「ん?何がじゃの?わしゃ、礼を言われるようなことはしておらんぞ?」

怜樹は、まいったなというような顔をして、笑った。いつもの微笑みをみせた。
心がすっきりと解放されたような、いつものような清々しい気持ちになった。

「うん、そうだな。そうしよう」

怜樹は、自分で自分に頷いた。

怜樹は、また、魅麗に会いに行ってみようと思った。


「ほうほう、カモメが、こんなに近くに飛んでおるぞ」

老人は、ゆっくりと立ち上がり、空を仰いだ。
「ほんとですねぇ」

怜樹も、徐に立ち上がり、空を仰ぐ。

「絵描きさん、初めて見たじゃろう」

「そうですね。素晴らしいですね」

「そうじゃなぁ。自然は偉大なホスピタルじゃ。いやぁ~、実に癒される」

「そうですねぇ」

「ん?絵描きさん、まだまだ若いのに、癒されるかの?」

「そうですねぇ。今日の僕にとっては、特に癒されてます」

「ほ~う、そうかい。若い青年よ。この大海原の絵画で、心身ともに癒され、自然の魂を心身に吸収し、みなぎる力にすれば良い。そして、また人生を頑張れば良い」

「なるほど。自然の魂を吸収する、か。大海原の絵画…。おじいさん、素晴らしい表現ですね」

怜樹は、感心した。

老人は、両手を広げ、空を仰ぎ、目を閉じて、大きく深呼吸をした。

それを見て、怜樹も空を仰ぎ、深呼吸をする。

【あっ………】

怜樹は、自分が魅麗に言った言葉を、ふと、思い出す。
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