I LOVE YOUが聴きたくて
「こら!ユウくん!駄目よー中へ入りなさ~い。カゼひくよー」

女の子は、自分も雨に濡れるというのに、雨避けをしながら、小さな男の子に手招きをしている。
男の子は、雨がそんなに楽しいのか、ひとりはしゃいで駆け回っていた。

「ユウくん!濡れるから、入って。あ~ぁ、上手な絵も濡れてしまって。せっかく今、画家のパパに似て上手ねって、言ったばかりなのにぃ」

女の子は、困った顔をしている。
男の子は、画用紙を持ったまま、駆け回っていた。

「もう!カゼひくでしょ!早く入りなさい!お姉ちゃんが言ってくれてるのに。雨がそんなに楽しいの?どうしたのかしら」

今度は、魅麗が困りながら言っていた。

自分の事のような口調をした魅麗を、怜樹は、少し、不思議に見ていた。


「ママ~」

小さな男の子が、魅麗に駆け寄った。


「え?」

怜樹は、驚いた。
そして、自分の耳を疑った。

【ママ?何で魅麗に、ママって?】

怜樹は、とても不思議でいた。

魅麗は、男の子をだっこすると、急いで駆け出し、女の子と一緒に、中へと入っていった。



怜樹は、車の中で考えていた。

【ママって…、どういうことだろう。魅麗は、子どもがいたの?一言もそんなことを言ってなかった。何故、言わなかった?】

怜樹は、事を把握できずにいた。

静まり返る車の中、雨の音だけが響いている。

【あ、そういえば…】

暫く考えていると、ふと、また別のことを思いだし…。

【画家のパパに似てって、どういうことだ?】

考えるほどに、怜樹は、わからなくなった。
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