I LOVE YOUが聴きたくて
「ごめんっ」

修は謝ると、掴んでいた綾の腕を離した。

「あ、ううん」

綾は、大変驚いて、びっくりした表情のまま、その心情を隠せないでいた。

綾は、特に、修に用事はないので、直ぐにその場を立ち去ろうとした。

「あっ…」

修は、綾に声をかけようとしたが、綾が、そんなふうではないので、言葉を飲んだ。しかし、やはり、綾に話しかけようと思い、声をかけることにした。

「待って!早乙女さんっ」

修に呼びとめられて、綾は、とっさに足を止めて、振り向いた。
前にも、修に話しかけられたことを思い出しながらも、普段、接することがないので、綾は、不思議に思っていた。

【この前から、何だろう……。今まで、話したこともなかったのに。この前は、タオルを貸してくれたりして…。こんな所を見られたら、笠原くんを好きな女子たちに憎まれちゃうよ~】

綾は、正直、困っていた。

「…何?」

「あ、いや……」

修は、一瞬、目を落とす。
自分から、女子に声をかけない修は、女子から話しかけられれば話すくらいのクールな雰囲気なのに、綾に対しては、正直、自分らしくないと思いつつ、何てきりだそうかと一瞬考えた。
しかし、ごちゃごちゃ考えても、うまい言葉も思いつかないので、修は、素直に思ったままを言うことにした。

「いつも急いで帰るけど、どこに行ってるの?」

「え?」

修が、自分のことを尋ねてきたので、綾は驚いた。
他の男子とは話すことはあるので、尋ねられても不思議に思わないが、修とは、普段、接することがなく、会話をすることがない。
しかも、彼は女子から人気で、高根の花に思われているので、自分に尋ねたことが、不思議だった。

【何で、私のことを聞くのだろう…】

そして、想像する。

【笠原くんを好きなあの子達だったら、「私のことが気になるみたい」とか言って、喜ぶんだろうなぁ。…てゆうか、何で私が急いで帰るのを知ってるのだろう…】
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