Star☆Hunt〜*スター・ハント+゚・*〜
…昼休みの終わるチャイムと共に、前ドアを開け放って入って来たのは先生じゃなかった。
「ヒコ?!お前なにやってンの?」
クラスのピエロ(笑)ヒコガワだった。
出席簿まで小脇に抱え、まるで先生気取り。
「センセ職員室で寝てんだもん。かわいそーだから俺がかわりに授業を」
………バカ?
「バカじゃねぇの?!お前に授業が出来んだったら猿でも大学いけるっつーの」
「引っ込めばかヒコ〜」
…うらやましい。
いつもみんなの真ん中にいて、いつも笑っていて、誰かを笑わせている。
ヒコガワみたいなやつには、孤独なんて縁もないだろう。
あたしが突き落とされた孤独。
知らなかったようでいて、ほんとはずっと感じていた孤独。
−昨日、パパとママはあたしの前で泣いてた。
今まで一度もなかったことだ。
泣きながらパパが話したのは、やっぱり一度だって聞いたことのない話だった。
ぼんやりしてるうちに午後の2時間が終わった。
先生はもちろん途中で慌ててやってきて、ヒコガワは教科書の角でたたかれた。
放課後、あたしはすぐに教室を出た。
今日も天気は晴れ。バカみたいに高い夏雲が、濃い青空に立っている。
アヤコと彼が帰っていくのを、靴箱の陰に隠れて見送った。
校門を出たところで、ヒコガワにチャリで追い越された。
方向は同じだけど、家は知らない。
金茶の頭が曲がった角を、はるかに遅れてあたしも曲がった。
何も見ていなかった。
あたしは、これからどうしたらいいんだろう?
…家に帰れない……
パパとママが待つ家に、まっすぐ帰れない。迷ってしまう。
…どこへ行っても…家に帰っても…あたしの居場所は、なかったんだ。
気がつくと、爆音が迫っていた。
けたたましいクラクションが、あたしに向けられている。
……あたしは、パパとママの、子供じゃない………
顔を上げると、爆音とクラクションとブレーキ音と、ピアスだらけの顔を叫びの形にしたドライバーが目の前にあった。
そのあとの瞬間は、わからない。
全部がCRASHして、まっしろになった。