Star☆Hunt〜*スター・ハント+゚・*〜
「ホントに帰らねぇのかよ」
「そうだよ。だからここにいるの。」

いきなり、後ろから声がした。
あきれたようなその声に、あたしは振り返らずに答えた。

なによ。こっちはあんたに救われた気でいたのに。

「考え直すって気はねぇみたいだな。…しょうがねぇか」

軽い砂の音がして、ヒコガワがこっちに近づいて来た。

「…なんか願うことはあるみたいだな。」

暗い地面ばかりの視界に、汚れた革のブーツが二つ現れた。

顔を上げたら、意外にも柔らかい表情で彼がこっちを見下ろしていた。

−その瞳は茶色だった。

「…やっぱカラコンなんじゃん。」
「どうでもいいだろそんなこと。とにかく行くぜ。」

…どこに?

「俺ん家。」
「は?!」
なに?なになに?!家?
「あのなにさっきのトコにいくんじゃないの?!」

ちょっとファンタジーになってたあたしの気分はどうしてくれんの?
え?さっきの嘘?

「変な勘違いすんなよ。むこうに行くなら俺ん家に入口あるからな」
…入口?

「あたし違うとこから行ったじゃん。車にはねられて行ったんだよ?」

「…生きた人間が生身のまま渡るには入口が必要になるんだ。さっきはお前が死にかけたから海のど真ん中に放り出されたんだよ。またおぼれたいなら車バーンで逝ってもいいけどな。」

そうなんだ。

…それより気になるのは。
ヒコガワのファッション。

「なにそのかっこ…?」

さっきはTシャツにサイズオーバーなカーゴパンツだった。のに。

「正装だよ」
「正装?!」

−ボロボロに削れた革の編み上げブーツ。土色に汚れた厚手そうなパンツ。大工さんみたいに大きなポケットつきの革ベルトを腰に下げてて、上着はまたボロボロの革ベスト。ベストの中はサラシ巻いただけ。

そんな冒険家みたいな服装の上に、背中にはカタナみたいなものまでしょっている。

「全部説明してやるよ。とにかく来いよ。」


…暗くて良かった、なんて思いながら、法律スレスレなかっこの同級生のあとをついて行った。

あとで思えばなんてお気楽だったんだろう。

男子の家行くなんて初めて!なんて考えながら、あたしは24時間の間に人生2度目の大分岐点に踏み込もうとしていた。


< 25 / 34 >

この作品をシェア

pagetop