新撰組恋絵巻(完)
癒しの術はどんな病や怪我も治す代わりにあるものを失う。
視界が涙で歪んで見える。
「……っ」
総司が次に目を覚ました時には私のことは何一つ覚えていない。
……そう。失うものとは記憶。
しかし単(ヒトエ)に記憶といっても全ての記憶が失われるわけではない。
あくまでも私と過ごしたここ数ヶ月の記憶。
――光が総司を包み込んでいく。これで彼の病は完治したはずだ。
「さよなら」
初めて私を受け入れ、愛してくれた人。どうかこの先もあなたが幸せでありますように。
後ろ髪を引かれる思いで私は部屋を後にした。
皆に別れの挨拶なしにここから出ていくのは心苦しいが仕方ない。
私はこのまま新撰組を抜け、帝と共に江戸に帰る。