新撰組恋絵巻(完)
その後
その道中、色んな思いが込み上げてきた。
本当にこれで良かったのだろうか?
……私は昔、母様と交わした言葉を思い出していた。
今ではもう十年も前のこと。
「ねえ母様。母様はどんな病も治せる力があるんでしょ?」
「うん?確かにその通りじゃ」
「ならどうして父様の病を治さないの?」
幼い私はその理由が分からず母に質問した。
「あの唐変木が生意気にも嫌がるからじゃよ」
「どうして?母様だってずっと父様と一緒にいたいでしょ?」
私の父も総司と同じ労咳を患っていた。
「よいか神楽。この術はな、病を治す代わりに記憶を失ってしまうのじゃ」
「きおく…?」