新撰組恋絵巻(完)
――私が帝のいる宿屋に着いたのは夜中だった。
「こんな遅い時間にごめんなさい」
「構わないさ。疲れただろう?隣の部屋が空いているからもうお休み」
しかし帝は嫌な顔一つせずに私を受け入れてくれ、さらには寝付くまで傍にいてくれた。
「先刻見たときとは違っていい顔つきをしているね」
「そう見える?」
「ああ。けどね神楽、我慢はいけないよ」
「うん。でも大丈夫だよ」
これは私の精一杯の強がり。
多分、帝はそんな私の気持ちなんてお見通しなんだと思う。
「一つ提案があるんだけどね。京を離れるのはもう二、三日してからでもいいかな?」
「まだ仕事が残ってるの?」
「うん。すぐ終わると思うんだけどね」
この時の私はまだ帝の真の意図を理解してはいなかった。
それに気づくのは数日が経ったある日の朝。