新撰組恋絵巻(完)
「ふざけんな、てめえ!!」
いや、正確には声をかけようとした。
「………」
店の中は異様な空気に包まれ、見れば複数の浪士が店主に言い寄り、金をせがんでいる。
どこかで見た光景だ。
つくづくツイてないな、私も。
「その辺にしておけ」
店主を庇うように浪士達の間に立ち、睨みがら言う。
「あ?女は黙ってろ」
「なかなかの上玉じゃねぇか。お前が代わりに俺らの相手してくれるってなら店から手を引いてやってもいいぜ」
「冗談は顔だけにしろ」
……相手にするのが面倒になってきた。この際、気絶してもらおう。
そう思い、腰の刀に手をかけようとしたのだが…。
しまった。今の私は着物だったんだ。
男装する必要もなくなったので本来の姿に戻っていたことをすっかり忘れていた。