新撰組恋絵巻(完)
あの時、土方さんは私にこう言った。
“戻る気があるならいつでも戻ってこい”と。
今、思えばまるで私が戻ることを予測していたかのような言葉。
「私、戻ってもいいのかな…」
戻りたい気持ちと今さら戻れない気持ちとが葛藤する。
「あ、神楽に拒否権はないから嫌だって言っても強制的に連れていくよ?」
しかし彼はそんな私の葛藤を一刀両断する。
この際もう気にするまい。
「でもこの格好じゃ戻れないよね」
ふと自分が今、女の格好をしていることに気づく。
「そうだね。一度帝さんのいる宿に戻ろうか。僕もお礼を言いたいし」
その流れから私達は宿へと足を進めた。
(また新撰組に戻るなんて言ったら帝は怒るだろうか)
そんなことを思っていると
「大丈夫だよ。きっと分かってくれるから」
私の気持ちを察したらしい総司が優しい声音で言う。