新撰組恋絵巻(完)
「両親は私が幼い頃に亡くなり、その後は父の知り合いの元で生活してきました。
しかしその知り合いが仕事で京に発ったきり行方が分からなくなりまして…」
事情を説明すると、近藤さんはうっすら涙を浮かべていた。
一方、土方さんはそんな近藤さんを呆れた顔で見つめている。
「昨夜、浪士達と斬り合いをしてたって話だったが、お前の生まれは何処だ?」
……なるほど。
どうやら土方さんは私が長州の回し者ではないかと疑っているらしい。
京の都は長州を筆頭とする過激派浪士がうろついており、そのせいで治安が良くない。
土方さんがそう考えるのも無理はなかった。
「生まれも育ちも江戸ですが」
「………」
私がそう答えると、土方さんは仏頂面で考え込んでいた。
恐らく信じていないのだろう。
当然と言えば当然、か。
「しかし、その知り合いの他に身寄りもないとすればさぞ心細いことだろう。
その知り合いが見つかるまでここに置いてやるというのはどうだ、トシ」