新撰組恋絵巻(完)
「神楽ちゃんってさ、平助のことは名前で呼んでるのに僕のことは呼んでくれないよね」
こんなこと言っても神楽ちゃんを困らせるだけだって分かってるつもりなんだけど。
案の定、彼女は深刻な顔つきで考え込んでいる。
別にそこまで考え込まなくてもサラッと受け流してくれればいいのに。
百面相している神楽ちゃんが可愛くて思わず笑みがこぼれた。
「沖田さんのこと名前で呼んでもいいんですか?」
「うん。僕としては呼んでほしいかな」
平助に負けてると思うと悔しいし。
「あと敬語も禁止ね」
「えぇっ!?」
そこ、そんなに驚くところかな?
「君と僕は一つ屋根の下で暮らしてる仲でしょ?」
「で、でもそんな急には…」
「ほら試しに呼んでみてよ」