新撰組恋絵巻(完)
「せっかく人払いしてあげたんだ。無理して男を演じる必要はないよ?」
「……質問に答えてよ」
私の口から出た言葉は自分でも驚くほど冷たかった。
けれど、それは帝のことが心配だったからだ。
「こないだの満月の日に神楽の妖力を感じたからね。君が京に来ていることは分かっていたよ」
そんな私を見て、彼は困ったように言った。
「連絡一つ寄越さないで、こんなところで何をしている?」
こんなことを言いたかったわけじゃないのに胸の奥に秘めていた気持ちを止めることができなかった。
「……少し厄介な仕事を頼まれてしまってね。ようやく一息つけたところだったんだよ」