ただ、しあわせ
ハハッと笑った恭介が、私の頬をなでる。


「だって恭介、小説の中に出てくる男の人みたいなんだもん」


「どんな?」


「ルックスがよくて性格もいい。仕事もバリバリこなして、家事も出来るでしょ?それに、いっぱい愛してくれる」


「愛海には、俺がそんな風に見えるのか」


コクンと頷く。


「そんな男の人は、私みたいに特に大変な思いをしないで平凡に生きてる人より、もっと必要にしてる人がいると思うの」


「たとえば?」


「病気の主人公とか、すっごく大変な思いをした主人公とか」


「愛海、恋愛小説読みすぎ」


またハハッと笑う恭介。


「もう、笑わないでよ。ほんとにちょっと思ったんだから」


「悪い悪い。でも俺、愛海だから一緒にいたいんだよ」


「……知ってるもん」


「そっか。ならよかった」
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