永久の灯火†久遠の祈り
「ただ、両親がアルバムを見せながら思い出話を聴かせてくれた。それを何度も繰り返してるうちにそれが本当の記憶のようになっていって……。実は今日学園長から話を聞くまで記憶が無いって事自体忘れてたくらいだ」

莉人は「あはは」と笑った。
その様子を複雑そうな顔で見つめる心優と壱夜。そんな二人を見た莉人は真顔に戻り、一つため息を吐いて続きを話し出した。

「変だと思わなかったわけじゃない。何度思い出を聴かされても、何度アルバムをめくっても、一向にそのことを思い出さない。思い出は全部他人の物語のようだった」

莉人は昔の記憶を辿るようにテーブルを見つめていた。

「それが記憶の謎。その謎が解けたんだ。あの思い出達は全て捏造されたものらしい。だから、思い出せなくて当然」

そう言ってコーヒーを飲んだ莉人はそのまま俯いてしまった。

「そう、だったのか」

「元気だして、莉人!」

「記憶なんかなくたって生きていけるぞ!」

俯いてしまった莉人を励ますように壱夜と心優が声をかける。それに反応するように莉人は顔を上げた。

「……苦い」

「……………………」

莉人が言葉を発した直後、その場に沈黙が訪れた。



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