永久の灯火†久遠の祈り
学園長室を後にした夏木夫妻は、静かな廊下に靴音を響かせながら歩いていた。

「私達がもっと気を配っていたら、あの子はまだ何も知らずに済んだのに」

「過ぎたことを悔やんだところで何も変わらないさ。それに、遅かれ早かれ彼女が真実を知るときは来る」

夫は妻の肩に腕をまわし、自分の方へ引き寄せた。

「今私達に出来ることは、この学園を守り、彼女を元老院やアタラクシアから守り抜くこと。そうだろう?」

「……えぇ、そうね」

妻はそう言って目を伏せた。

「最初からあの子を手離す日が来ることは分かっていたはずなのに。こんなに辛いとは思わなかった……」

夫は何も言わず、妻の肩を掴んでいた手に力を込めた。

二人はそのまま寄り添いながら廊下の奥へ消えていった。



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