素直になれないっ
 ~凛~

 ただ黙って東雲に引っ張られていく。

 階段を一番上まで上がり、行き止まりかと思うと東雲は勢いよく屋上のドアを開けた。

 ドアをくぐるとそこは少しオレンジ色に包まれた世界があった。

 美しくて、温かくて、とてもまばゆい世界。

 見とれていると彼は目線をあたしと同じ高さにして、片方の手であたしの頬を包んだ。

 それが優しくて、温かくて、ついに我慢していたものが溢れた。

「うっ、ふぅ・・・ひっく・・・しの、のめぇ・・・悔しいよ。しの、のめ達が悪く言われて・・・やだぁ・・・」」

 声をあげて弱音を吐き出す。

 片方の手は彼の手に、もう片方はシャツを強く握り締める。

 何も言わず彼は強く抱きしめてくれた。

 シャツ越しに感じる体温が、

 少し顔にかかる金色の髪が、

 いつもより近くで匂う彼の甘い香りが、

 あたしを安心させてくれる。

 

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