素直になれないっ
 

その日は雨が降っていた。
 
家に帰ってる途中お隣さんを見つけた。

 お隣さんは道の端に捨てられてた子犬のところで止まった。

 その子犬は誰からも無視され続けていた。

 小さな段ボールの中でずっと震えながら雨に打たれ続けていた。 

 だけどお隣さんはそいつを見たら迷いなくそこで止まりしゃがみ込んだ。

 誰もが無視する中、その子犬を傘で覆う。

 そして優しく抱きかかえて俺が見たことのない笑顔で笑った。
 

  初めて見た・・・あの人が笑うのを。
 

 お隣さんはいつも警戒するようなしかめっ面ばっかしていてなかなか笑ってくれないのに。
 
 きっと、本当はあんな風に笑うんだと思った。

 優しくて温かくて飾られてない真っ新な笑顔
 
 あの笑顔を見て、あの優しい笑顔を見てからお隣さんは俺にとって特別になった。


   



   なあ、覚えてる?

   幸ちゃん・・・・

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