誰よりも、あなたに~I NEED YOU~
トシは薫を包みこむような優しい声で

『大丈夫…大丈夫だから……』

と囁いた。

薫は弱々しい声で

『………ママ……ママ……ママ……』

トシは思わず涙が溢れてきた。

薫は日頃強がっているものの、こんなに弱い一面を持っていることに涙が溢れてきたのだ。

トシは同時に自分には母親も父親もいる弟もいる…幼い頃から孤独を知らなかったことを強く感じた。

『孤独って何?…孤独って寂しいのか?…孤独じゃだめなのか?…人って一人じゃ生きられないのか……』

トシの心にはそう浮かび上がるような思いがあった。


そして薫の肩を持って薫の顔を見た。

泣き疲れた様子でまた眠ってしまった。

またではなく昨夜はずっと泣いていて眠っていなかったのかもしれない

トシ自身もずっと起きていて眠くなって薫と一緒に寝てしまった。


薫ははっきり目が覚めて意識も戻ったみたいだ。

そして薫は隣りを見てみるとトシがいた。

薫は、

『トシが隣りにいる…なんで?…その前にここはトシの部屋?…なんで?』と頭であれこれ考えていた。

とっさに薫は叫んで『キャー』と言いながらトシを蹴りとばした。


< 27 / 78 >

この作品をシェア

pagetop