誰よりも、あなたに~I NEED YOU~

礼それは君にしかできないこと

『俺らには……病気を治すことはできないよ…あと、うちのおばあちゃんも調子よくないんだ…』

その日、薫と美沙紀は不安な表情を残しつつ別れた。


夜になって僕は部屋で一人ないていた。

『礼……君がいなくなるなんて想像できないよ…………礼にはいつも………迷惑ばっかり…かけて……うっ…うう…まだ礼と一緒にいたいよ……うっ…うぅ』

僕は泣き続けた。明日どうなるかわからない不安で…悲しみのあまり泣くしかなかった。

それに礼のことばかりではなくおばあちゃんのことも強く心配していた。


『おばあちゃん…』

幼い頃からおばあちゃんと一緒にいた。

反抗したこともあって悲しませることもあった。今思えば、なんの恩返しもしていないのに、ずっと僕のことを心配してくれるおばあちゃんは一人暮らしをして初めてありがたみがわかった。

『まだ……恩返しもしてないじゃん……まだいかないでよ………』

夜は悲しみをリアルに表現しやすい。

おばあちゃんがいなくなったら僕は親不孝なことしかしていないって自分を責めるだろう。


悲しくて悲しくて泣くしかなかった。

まだ生きてるけど、明日どうなるかわからないから、いなくなることも時には鮮明に思う。


『口ではうるさいっていっても僕の大切な人…礼も…おばあちゃんも……お願いだからいなくならないでよ……おばあちゃんの笑った顔…まだ見てないよ…いつも僕に厳しくて…笑顔なんてめったに見せないから…たまには笑ってよ……僕…悲しくて…悲しくて…悲しくて…おばあちゃん…笑ってよ…』


僕は子どもの頃、怖い幽霊を見たっておばあちゃんに泣きついた時のように泣き続けた。

涙が出なくなるまで必死に願った。

『お願いだから…悲しいことは…悲しいことは…もう嫌なんだよ………うぅ……悲しいことって…なんで…起こるのさ……』

鼻水で鼻呼吸が苦しかった。それほど大泣きした。

夜って時に恐ろしいほど人を苦しめる。

何か怖くて、何かわからないけど、悲しさで前が見れなくなる。
< 53 / 78 >

この作品をシェア

pagetop