泳いでね、スー〜震災の中で〜
母親は微笑みながら頷くと、海に背を向けて歩き出した。

その母親の肩越しに海を見つめる元気がハッとした表情を見せた。

彼の目に、一瞬、海に潜るノナが見えたような気がしたからだ。


「またね…スー…。」

呟いた元気に、

「元気君、どうしたの?」

と、母親は尋ねた。

「なんでもないよ。」

そう答えた元気の笑顔に、母親は頷くと、帰り道を急いだのだった…。



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