法螺吹きテラー
1.階段
『北校舎の階段を、
日暮れ時に、1人で通ると、
もう1人の自分に出会ってしまう』
そんな噂を聞いたその日、
俺はまさに日暮れ時に、
1人で、その階段を上ろうとしていた。
自分以外の、足音は無い。
なのに、1段目に足を踏み出した途端、
俺は気が付いてしまった。
踊り場に、誰かが居る事に。
下りたいのなら、止まらずに行けばいい。
上りたくても、同じだ。
それなのに踊り場の人物は、
ただ、そこでジッと止まっている。
まるで、俺を待っているかのように。
< 1 / 95 >