法螺吹きテラー
急いで扉まで行ったとして、
果たしてそれは、開いてくれるだろうか。
ホラー映画なら、
閉じ込められて、追い詰められて。
そして登場人物は、出られないまま。
……嫌な想像をしていると、
扉の外から、足音が聞こえてきた。
「思い込みは怖いよ。
だって、そこにいるものを、いないものと
いないものを、いると捉える事が出来る」
おそらく独り言だろうか。
もしくは俺に聞かせる為か。
よく解らない事を喋っているのは、
紛れも無く、先輩の声だった。
扉の前に辿り着いた人物は、
しかし手を触れず、ただ喋るだけ。
「例えば、今ここに。
いるのは俺だと、それは確かな事かな?」
「……安藤先輩以外、
その声でそんな事を言う人、
居ないと思いますけど」
「じゃあ、開けていい?」
そう尋ねてくる人物。