法螺吹きテラー
「それじゃ行くか、佐野(さの)君」
「……あ、はい」
先輩が外に出て、
慌てて俺もそれを追う。
倉庫から出た瞬間、
背後から、さっきとは違う、視線。
瞬時に背筋に寒気が走った。
怖いのに、何故か見なきゃいけない。
そんな気がして、
振り返ったその時、バンッと大きな音。
驚いて横を見ると、
扉の近くにいた先輩が、
勢いよく、扉を閉めていた。
閉まる直前に見えた物。
それは、扉近くの、
小学校で使われるような、
カラフルで高さのあまりない跳び箱。
そしてそこから伸ばされる、
俺が、想像してしまったような、手。
見ていたのか見ていないのか。
先輩は扉を閉めた後、
振り返らずに歩き出した。
そしてまた言う。
「全部、嘘だから」
戻って確かめる気にもなれなくて。
だから俺も、嘘だと信じて背中を追った。
七不思議なら、
巻き込まれない、何かがいい。
この話は、ホラ話。