法螺吹きテラー
振り向く事なら、出来るだろうか。
あるいは、目を閉じる。
こちらへ向かってくる、
あの誰かを避ける、簡単な方法。
それを、声をかけられて、
ようやく思い出せた。
聞き覚えのある、
その声の方へと顔を向けた。
すると、声の主は、
俺の答えも待たずに、話を続ける。
「死んじゃうんだよ。
ドッペルゲンガーに会うと」
……え、じゃあまさか、
俺、死ぬんですか?
振り向いた先に居た、
同じ部活の先輩に、そう尋ねようとした。
だけどやっぱり何かを言う前に、
先輩は次の言葉を紡ぎだす。
「まあ、嘘なんだけど」
……『嘘』……?
じゃあ、やっぱりこれは、
部活の先輩たちによる、悪戯?
ここまで来る1年は、
じゃんけんで決めた。
だから、俺に対する嫌がらせでは、無い筈
……あれ、じゃあ上靴とか、
合わせられないんじゃ……?
その事に気が付き、
もう1度、怖いけれど、上を見た。