法螺吹きテラー
……そこには、誰も居なかった。
足音も無く、
あの誰かはどこかへ消えていた。
また下を見ると、
先輩は楽しそうに笑っていた。
「……先輩、嘘って?」
「全部、嘘なんだよ」
それは、どこから?
噂から?
それとも、死ぬ事が?
何も解らないままの俺に、先輩は言う。
「さっさとお遣い
終わらせちゃって、戻らない?」
しょうがないから、付き合ってやるよ。
そう言って先輩は、俺の隣に並んだ。
よく解らないけれど、
とりあえず1人ではなくなったから。
だから、まあ、大丈夫だろう。
隣の存在に安心した俺は、
しかし数十秒後、
彼の紡ぎだす、本人曰く『ホラ話』に
早速後悔しだす事になったのだった。
……これならまだ、1人の方がマシだ。