私たちの愛のカタチ
北原咲、きたはらさき、キタハラサキ・・・
まただ、と桃子は思った。
勉強中のノートの上にはあの人、咲の名前が様々に綴られていた。
消しゴムを探しながら桃子は自分自身にため息をつく。
片時も頭から離れないほど、溺れてしまっている。
名前を消すことが憚られて、桃子は少し丸みがある自分の字を指先でそっと撫でた。

「咲先輩・・・」

名前を呼ぶだけで胸が高鳴る。
まるで遠くにいる咲に直接呼び掛けたかのように。
実際一人きりの部屋は、シンプルな掛け時計が規則的に秒を刻むだけで誰も見ていないのだが。
桃子の耳にはいつまでも自分の甘い声がこびりついていた。

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