頭痛
秋史は信一郎の葬儀に参列した。
信一郎の葬儀は、残された家族の意向で、ささやかに取り行なわれた。
笑顔の信一郎の写真が飾られている。
そんな写真に飾られるような若さでは無い筈だ。
「バカヤロウ……」
秋史は位牌に向かって呟いた。
「バカヤ……ロウ」
同じ言葉しか出なかった。
秋史なりに語りかけてやるつもりだったのに、悔しさを滲ませる言葉しか浮かんでこなかった。
秋史は言葉を飲み込んだ。
ここに至って、信一郎の写真の中の笑顔が、妙に秋史の気を和らげてくれた。
「秋史さん……」
その葬儀の帰り、秋史は信一郎の父親から、突然呼び止められた。
秋史が振り向くと、年老いて痩せ細った信一郎の父親が、じっと秋史を見ていた。
そして、手に持っていた本のようなものを差し出した。
「信一郎の遺品でございます」
差し出されたのは、信一郎の日記だった。信一郎の父親は、私に読んで欲しいというのだ。
「私の他に、誰も読んでおりません。貴方には是非、目を通して頂きたいのです」
信一郎の父親はそこまで言うと、おし黙った。
「どうして私に? 本当に読んでも宜しいのですか」
秋史はもう一度念を押した。小さく頷いた事を確認して、信一郎の日記を受け取った。信一郎の父親が、秋史に何を伝えようとしているのか、その時は全く分からなかった。
信一郎の葬儀は、残された家族の意向で、ささやかに取り行なわれた。
笑顔の信一郎の写真が飾られている。
そんな写真に飾られるような若さでは無い筈だ。
「バカヤロウ……」
秋史は位牌に向かって呟いた。
「バカヤ……ロウ」
同じ言葉しか出なかった。
秋史なりに語りかけてやるつもりだったのに、悔しさを滲ませる言葉しか浮かんでこなかった。
秋史は言葉を飲み込んだ。
ここに至って、信一郎の写真の中の笑顔が、妙に秋史の気を和らげてくれた。
「秋史さん……」
その葬儀の帰り、秋史は信一郎の父親から、突然呼び止められた。
秋史が振り向くと、年老いて痩せ細った信一郎の父親が、じっと秋史を見ていた。
そして、手に持っていた本のようなものを差し出した。
「信一郎の遺品でございます」
差し出されたのは、信一郎の日記だった。信一郎の父親は、私に読んで欲しいというのだ。
「私の他に、誰も読んでおりません。貴方には是非、目を通して頂きたいのです」
信一郎の父親はそこまで言うと、おし黙った。
「どうして私に? 本当に読んでも宜しいのですか」
秋史はもう一度念を押した。小さく頷いた事を確認して、信一郎の日記を受け取った。信一郎の父親が、秋史に何を伝えようとしているのか、その時は全く分からなかった。