頭痛
 秋史の話だと、家族の生命保険の受取人の名義が、秋史になっているらしいということ。
 警察の目は、秋史に注がれるだろうということ。

 傷が残らないように、太い紙テープで縛り、ガスを鼻から吸わせて意識を失わせようと考えたこと。
 秋史の実家が、ガス漏れ事故を起こし、家屋と証拠を吹き飛ばすだろうと、考えたこと。

 土地さえ残れば、それで良いこと。

 そして、秋史は約束を守ったこと。
 大金を積んで、土地を手に入れたこと。

 スーパーの建設を始めたこと。
 地域住民の反応が良いこと。
 順調に工事が進んでいること。

 そして、スーパーを開店したこと。
 
 びっしりと書き込まれた頁から、信一郎の執念を感じた。
 まさに、悲願を達成した信一郎は、感無量であったに違いない。


 秋史は淡々と語られている、信一郎の日記を、震える手で閉じた。
 秋史は大きく、ゆっくりと溜息をついた。
 しかし、同時に、一通の封筒が、日記の隙間から足元へ落ちた。
 秋史に宛てた信一郎の父親からの封書であった。
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