頭痛
 この手紙は、わたくしの遺書でございます。

 全ては元来、わたくしが長い間、密かに望んでいたことでございます。そのことを愚息である信一郎が、頭の中で具体化したことでございます。
 そして、貴方様のお口添えによって、全ては完遂されたのでございます。
 しかし、信一郎は、あのような形で、この世を去ってしまいました。
 何の為に危険を侵して、ここまでやってきたのか、わたくしは、虚しくて、悲しくて、生きて行けなくなったのでございます。
 わたくしはわたくしの意思で、命を絶ちます。自らの愚かさを呪って。

 貴方様がこの手紙を読む頃には、もはや、わたくしはこの世にいないでしょう。
 貴方様に御迷惑が掛らぬよう、永遠に誰にも見付からない場所を、選んでございます。
 わたくしに出来る償いは、信一郎の側にいてやることだけなのです。

 どうぞ、御理解、頂きませ。

 草々
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