頭痛
 秋史はあの夜、信一郎の計画を、携帯電話で聞いた。昔の信一郎は、空想の好きな、澄みきった少年であった。その空想の世界は果てしなく広く、少年の秋史は沢山の夢を、信一郎と共に見たものだった。

 その夜の電話で話した信一郎は、汚されていた。父親の野望に溺れ、取り憑かれていた。

 秋史にはとても受け入れられなかった。それは、許されざる行為である。

 秋史はその瞬間、とっさに、信一郎を救いたいと思った。
 しかし、何を思ったのか、秋史は信一郎が語る計画を、了承してしまったのだ。

 信一郎とは、秋史の同意さえあれば、何事をも成し得る関係であった。信一郎は父親の計画を実行に移した。


 秋史の頭痛は、軽くなることはあっても、止むことはなかった。
 自分の中の逃げ道を失った秋史は、本来の自分をさらけ出して、信一郎の父親の消息を捜し出さなければならなくなった。

 それは、秋史自身による、確実な答えを求める為に。
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