頭痛
ある日、秋史の頭痛が思いのほか酷くなった。秋史は病院へも行かず、下宿で独り寝込んでいた。
明くる日の出来事である。母が突然、秋史の下宿を訪ねてきた。寝込んでいる秋史の姿を見て驚き、室内から米を探し、粥を作ってくれた。
「母ちゃんゴメンな。苦労ばっかりかけて」
「何を言うとる。今年卒業せんと、叔父さんを説得できんから、体治して頑張りや」
半身を起こした秋史は息を吹き掛けながら、レンゲに掬った熱々の粥を口に運ぶ。
「なぁ母ちゃん。叔父さんは何でうちに居るんや。いつまで居るんや」
秋史は食べる手を止める。傍らに正座している母は、顔を曇らせた。
「秋史。叔父さんは、母さんや凪子の面倒を見てくれとるんやで」
凪子(なぎこ)とは、十二才離れた妹である。
小さい頃にはよく面倒を見たし、一緒に遊んだのだが、凪子が成長するに連れて、お互いによそよそしくなっていた。兄と妹とはそんなものなのかとも、自分なりに理解するしかなかった。
「俺は叔父さんを好かん。別に家は貧乏でもない筈や」
「お金の問題やない。お前はおいといても、凪子には父親が必要なんや」
母はすがる様に言う。しかし、たとい妹に父親が必要だとしても、納得がいかない。
「叔父さんは叔父さんや。父ちゃんとは違う」
「秋史、叔父さんのこと、好きになれへんか」
「母ちゃん。何言うとんねや。そんなん無理に決まっとるやないか」
秋史は急いで粥を食べ尽すと、母に背中を向けて横になった。
明くる日の出来事である。母が突然、秋史の下宿を訪ねてきた。寝込んでいる秋史の姿を見て驚き、室内から米を探し、粥を作ってくれた。
「母ちゃんゴメンな。苦労ばっかりかけて」
「何を言うとる。今年卒業せんと、叔父さんを説得できんから、体治して頑張りや」
半身を起こした秋史は息を吹き掛けながら、レンゲに掬った熱々の粥を口に運ぶ。
「なぁ母ちゃん。叔父さんは何でうちに居るんや。いつまで居るんや」
秋史は食べる手を止める。傍らに正座している母は、顔を曇らせた。
「秋史。叔父さんは、母さんや凪子の面倒を見てくれとるんやで」
凪子(なぎこ)とは、十二才離れた妹である。
小さい頃にはよく面倒を見たし、一緒に遊んだのだが、凪子が成長するに連れて、お互いによそよそしくなっていた。兄と妹とはそんなものなのかとも、自分なりに理解するしかなかった。
「俺は叔父さんを好かん。別に家は貧乏でもない筈や」
「お金の問題やない。お前はおいといても、凪子には父親が必要なんや」
母はすがる様に言う。しかし、たとい妹に父親が必要だとしても、納得がいかない。
「叔父さんは叔父さんや。父ちゃんとは違う」
「秋史、叔父さんのこと、好きになれへんか」
「母ちゃん。何言うとんねや。そんなん無理に決まっとるやないか」
秋史は急いで粥を食べ尽すと、母に背中を向けて横になった。