STRAY・CAT 〜ソノ指先ニ恋ヲスル〜《年上男と媚薬な契約》完
あたしは夜の街をさ迷う
家出猫――または親に捨て
られた捨て猫にすぎなくて、
那智はそれを拾った仮の飼い主。



だからどれだけ深く体を
重ねても、ここがあたしの
家になることはないし、
あたし達の関係が変わる
こともない。



那智があたしのことを何も
知らないままあたしを抱く
のも、そのため。



「……………っ」



ふいに、堪え切れなく
なった熱い滴が頬を伝った。


――ここに来て初めて
流した、涙。



(こんなことになるなら……

契約なんて、しなければ
よかった――…)



心の中でだけ呟いて。



あたしは声も出さず、一人
熱い涙を流し続けた……。





     ☆☆☆☆☆


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