君の隣
「それにしても暑い~…」
クーラーが壊れて気温が32度をさしている教室に入ると
あたしは窓側の一番後ろの席、胡葉は一番前の席へと座った。
「はい、じゃあ授業始めます。」
朝練の疲れか、始まった直後睡魔が襲ってきた。
だんだん黒板の文字がぼやけていく…。
「はい、小田切さん、問4の問題の答えは?」
―――――ガタッ!!!
起き上がると同時に机を思い切り蹴ってしまい冷たい視線が
あたしの方に集中した。
「えっと…問4は…。」
もちろん、何ページなのかさえも分からなければ
何の勉強をしているのかさえも分からない。
「小田切さん?」
もう成績なんてどうでもよくなって分かりませんと言おうとした時…
――――カサッ
机の上にくしゃくしゃに丸めた紙が飛んできた。
幸運なことに先生は目が悪くて見えてないらしい。
音を立てないようにそっと開ける
その紙には《問4→6√3±3x-76》と汚い字で書いてあった。
あたしはその紙が誰から飛んできたかなんてお見通しだ。
「えっとお…6√3±3x-76です。」
「はい、正解ね。難しい問題なのによくできたわね。」
あたしは座ってすぐに紙の飛んできた方向を見た。
あたしに紙を飛ばしてくれたのは幼なじみの内館空。
こっちを向いてピースをしてる。
空はあたしが滉平さんを好きってことを唯一知っている男子。
幼なじみだから言いたいこともいえるし相談もできる。
だからあたしは空にメールをしてやった。
送信ボタンを押すとすぐに空のケータイが鳴った。
空のケータイはマナーモードになってなくて空の好きな歌手の歌が流れた。
いつもマナーモードにしない空の癖を逆手に取った。
「ちょっと!ケータイ鳴らしたのは誰?内館くんね、後で控え室に来なさい。」
はい、と小さい声で返事して、あたしをにらんだ。
すると下を向いてあたしにメールを打ってるけど
あたしのケータイはマナーモードだから当然先生は気づくはずもない。
空からのメールには《馬鹿野郎》の一言だけが記されていた。