1つの願い事【完】
少年の妹は小学生に上がった直後に事故に遭った。
真新しいランドセルは1か月も使わないうちにボロボロになった。
クラスのみんなと仲良くなる前に、もう会えなくなった。
「お兄ちゃん?」
「ん?」
「真夏の足、もうすぐよくなるかな?」
「そうだな、もうすぐ直るよ」
小さな兄妹は知らない。
少女はもう一生歩けないという事実を。
もう、元気に走れないということを。
彼女を傷つけないようにと、親は秘密にしている。