LOST
「心配するな。俺は生きる勇気もなければ、死ぬ勇気なんてもっとない。結果的に死なないから。」
「そっか…」
そうだ。
俺には死ぬ勇気はない。
俺の言葉を聞いてもっと俯く女の子。
こいつの方が、よっぽど俺より死にたがりだ。
目で分かる。
俺と同じでこいつも、この世には得るものなんて何もないと思ってるんだろう。
ただの推測に過ぎないが。
「ねぇ。」
女の子がふいに口を開いた。
「一つ訂正がしたいの。」
ゆっくり話し始める。
「生きることには勇気がいるかもしれない。けど、死ぬことは勇気じゃない。逃げだよ。」
なんだこいつは。
俺はこいつに会った数分の間で何回思っただろう。
今まで会ってきた奴とは違う。
弱い奴だと思ったら強い奴だったり。
強い奴だと思ったら弱い奴だったり。
女の子の、俺を見る目は揺るぎない真っすぐな目だった。
ほんとに
なんなんだこいつは。