カワイイだけじゃ物足りない
「で、でも…よくわかったね」
「さっき先生が呼んでたし」
あ、確かに私の名を呼んでたなと記憶を辿りながら無言でうんうんと頷く。
「………」
何を話せばいいのかまったく分からず口をつぐんだままになってしまう。
それに今、目の前にいるのは驚くほど整った顔立ちをしている美少年。
私みたいな不細工で冴えない奴なんかと本当は話したくないんじゃないのかな…などと考えてしまう。
じゃなくて何か会話を…
ってあれ? 私、本当は話したくないんじゃ…
「房名さん?」
「あ………」
また、一人で勝手に考えこんでしまった。
青山くんが私の名を呼んで不思議そうに見つめていた。
って…見つめられてる!?
そんなことを意識してしまい、顔から熱が出ていることが感じとれる。
なるべく顔を見ないよう微妙に視線を反らしてみる…と、近くの席にいた女子が私を睨んでおり、その視線と合ってしまう。
あ、睨んでる。
何でお前みたいな奴が仲良く喋ってんだよ?っと言うような怒りが、睨みに込められていることが伝わってくる。
そうだよね。
私みたいな奴が話す相手じゃないよね。
わかってるよ。
再確認のように自分の醜さを納得し、視線を自分の机へとかえる。
他人からみると俯いた状態へ。
「…………ふ「あー、青山くん隣りだねー!よろしくぅ」
私が立場を理解したのだと感じたのか、先程睨んでいた女子が普段のトーンよりも一段階高そうな声で青山くんに話しかけていた。
女ってどうしてこうもころころとかわるのだろう。
先程まで私に睨みをきかせていたというのに、そんなことなかったかのような振る舞いをしている。
少しでも好意がある人間には、自分をよく見せようとするためにそうなるのかななどと二人のやり取りを何となく眺めながら改めて考えてみたり。