カワイイだけじゃ物足りない

そんなことない。
気にしないで。

そう言いたいのに口が動かないのは、私が人と話すことをほとんどしてないから。

ましてや初対面に近くもなると口が動かないのは尋常じゃない。

一種の対人恐怖症みたいなものなのかも…

勝手に自分を分析して納得がいく理論を立て当て嵌めていく。

これが私の悪い癖なのはわかっているけど…

でも……

「だ、大丈夫?」

私が脳内で葛藤している間の私の表情が不安がらせるような表情をしていたのだろうか。

ふいにその言葉が耳に入ってくる。

「あ、ごめん…大丈夫だよ」

ついつい人がいるのに自分だけになってしまう。

どうしようもない自分が更に情けなく腹立たしい気持ちにさえなる。

不意に美少年くんの表情が変わり

「……僕は青山 燈麻(アオヤマ トオマ)って名前で…同じクラスメートとしてこれからよろしくね……えーと、房名さんでよかったかな?」

「ふ……ふぇ!?」

突然の彼の口から自分の名前が出てきたことに変な声を漏らしながら驚く。

「あれ?違った?」

私の表情を汲み取ってか、青山くんの表情が不安げな表情へと変わる。

「あ、ち、違うの…合ってたから逆にびっくりしちゃって…それで」

アタフタしながら答えた私に青山くんはホッとしたのか、ニコリと笑い

「そっか、よかった」

と安心してくれた。

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