かけら(「坂道」 短編集)
かけら5 こどく
学校の古びた図書館には、ケンジ一人っきりであった。
ぼんやりと古びた電灯に照らされた机の上にケンジはシャープペンシルを置くと、ぼんやりと窓の外を眺めた。
雪が降っていた。
昨日まで一緒にいた裕美は、もうここにはいない。
野球漬けでろくに勉強をしてこなかったケンジに、丁寧に笑顔で教えてくれた彼女は、もうここには来ない。
彼女は、雪が好きだった。
きっとこの光景を見たら、嬉しそうに笑ったであろう。
勉強をするよう促すケンジを見て、すまなそうに笑ったであろう。
彼女は、いつも笑っていた。
ケンジは、寂しそうにうつむいた。
ケンジの隣の席は雪明りを浴びて、冷たくぼうっと光っていた。
彼女は、もうここに座ることはない。
彼女は、もうここに座ることはない。
彼女は。
もうここに座ることはない。
ぼんやりと古びた電灯に照らされた机の上にケンジはシャープペンシルを置くと、ぼんやりと窓の外を眺めた。
雪が降っていた。
昨日まで一緒にいた裕美は、もうここにはいない。
野球漬けでろくに勉強をしてこなかったケンジに、丁寧に笑顔で教えてくれた彼女は、もうここには来ない。
彼女は、雪が好きだった。
きっとこの光景を見たら、嬉しそうに笑ったであろう。
勉強をするよう促すケンジを見て、すまなそうに笑ったであろう。
彼女は、いつも笑っていた。
ケンジは、寂しそうにうつむいた。
ケンジの隣の席は雪明りを浴びて、冷たくぼうっと光っていた。
彼女は、もうここに座ることはない。
彼女は、もうここに座ることはない。
彼女は。
もうここに座ることはない。