キミがいたこと
『行ってくる』
中学から使っている皮スクバに適当に文房具やら、財布やらを突っ込み家を飛び出た
親父がいつの間にか買ってきていた、ダサい通勤靴は硬くて履きずらい
本当は、ローファーが良かったのだが

そんなこと言えば、靴は去年のモノを履かされるに違いない
それにくらべれば、親父の見栄っ張りな通勤靴の方がいいに決まってる





ちょうど来ていたバスに飛び乗り、駅に向かう
今日から俺の母校となる高校は、最寄り駅から5駅離れた場所にある
まぁ正直そんなことどうだっていいのだが





だが、入学初日からまさかの遅刻は、あり得ない
私立だし、流石に退学までとは、ならないだろうけど、停学ならあり得ない事もないかもしれない



嗚呼
なんかすべて上手くいかなさすぎる
前に座ってるおっさん、朝っぱらから酒臭いし
なんかスクバに、カロリーメイト入れて来ちゃったし
意味不明だ







駅につくと、改札に向かった



“ピピピ~”
『えっ?!』


改札にSuicaをかざしても、改札口が開かなかった
『お客さま?』
『はい!』
『あの,,,残金が0なんですが,,,』
『えっ?!嘘?!』
『そちらの、機械で、チャージしていただくか、切符をお求めになられていただけますか?』
『マジかよ!』



大声で、叫んでしまったため、周囲の視線が痛い
俺は急いで切符を買って改札を抜けた





朝のラッシュは過ぎたらしく、電車は割りと空いていた








『座らないの?』
誰かが俺の制服の裾を引っ張った
『ねぇ?』
『えっ?!』
幼い幼稚園児のような声の主は、パッつん前髪に綺麗なボブ、吸い込まれそうな瞳、小柄な体
人形のような女の子だった
『そんなに見ないで,,,恥ずかし』
『あっ、ゴメン』



俺は、女の子の後ろの席に座った
『ねぇねぇ』
『えっ?』


『おんなじガッコだね』
『えっ?!』


さっきから不思議なことばかり聞いてくる子だ




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