ハカナキナミオト
「そうか。」
「私」はうなづいて溜め息を吐いた。あまりに早く謎が解けた事への、がっかり感がそうさせたのだ。
と、「私」の足下の砂の中から、何か赤茶色の物体が覗いている。はて、と思い、砂を払うと中から穏やかな顔が現れた。「地蔵」だ。
赤茶色の素焼きの地蔵。
「私」はその地蔵を掘り出し、砂を払って卒塔婆の傍らにおいた。
「私」は、この辺の流儀には疎いので、とりあえずは、さぞや息苦しかったであろう、見晴らしの良いように置いておこうかぐらいで、海を見渡せるように据え付けてみたのだった。そして小一時間ほど、「私」は地蔵のとなりでぼんやりと煙草を吸ったりしながら、地蔵と同じ視線で海を見ていた。
やがて陽が程よく傾く頃、「私」は地蔵に、それではとばかりに一礼して、これより戻らねばならない騒々しい街の景色を思い、うんざりしつつも浜辺を去った。
それだけだった。だが、異変はすぐさま訪れたのである。
「私」はうなづいて溜め息を吐いた。あまりに早く謎が解けた事への、がっかり感がそうさせたのだ。
と、「私」の足下の砂の中から、何か赤茶色の物体が覗いている。はて、と思い、砂を払うと中から穏やかな顔が現れた。「地蔵」だ。
赤茶色の素焼きの地蔵。
「私」はその地蔵を掘り出し、砂を払って卒塔婆の傍らにおいた。
「私」は、この辺の流儀には疎いので、とりあえずは、さぞや息苦しかったであろう、見晴らしの良いように置いておこうかぐらいで、海を見渡せるように据え付けてみたのだった。そして小一時間ほど、「私」は地蔵のとなりでぼんやりと煙草を吸ったりしながら、地蔵と同じ視線で海を見ていた。
やがて陽が程よく傾く頃、「私」は地蔵に、それではとばかりに一礼して、これより戻らねばならない騒々しい街の景色を思い、うんざりしつつも浜辺を去った。
それだけだった。だが、異変はすぐさま訪れたのである。