キミへ

怜衣くんが金髪の彼にアッパーしていた。



「………」

「? 杏菜ちゃん?」

「も…、だめだ…っ」



あたし笑いを堪えきれなくなって声を出して笑った。



「アハハハハッ!!」

「杏菜ちゃん?」

「え…」

「ふふ…ははは…!」



しまいには涙まで浮かんできた。



「あははは!」

「杏菜ちゃん…」

「あ……」



慌てて口元を押さえた。うわぁ、しまった…やらかしちゃったよ……。



「………」

「そんなに面白かった?」

「……ぇ?」



自然と下がっていた頭を上げたと同時にポンと手を置かれた。



「俺らお笑い芸人なれるかもなー」

「お前らとなんて組みたくな〜い」

「同じく〜」

「んだとお前らぁ!!」

「………」



狭い教室で、3人の追いかけっこが始まった。



「別に気にしなくても大丈夫だよ」

「そーそー。言われ慣れてるし」

「タァァアッチ!!」

「ぶほぉっ!!!」



吹っ飛んでいく金髪くんに哀れみを感じた。



「そだ、まだ名前言ってなかったな! 俺は 「はぁい、アタシ黒瀧雅(クロタキミヤビ)でぇす!! よろしくねっ」 ……てめ、雅」


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