キミへ
「っ!!」
うわ、キモッ!!
「いいね、その顔…そそる…」
「……せ」
「ん? 何? 怖くなった?」
ブチッ。
あたしの中で、何かが切れた。
「離せよ」
「ははっ、いつまで強気で―――」
ガンッ!!
「いっ!!!」
男の股間を容赦なく蹴ったあたし。
急所だもんね…? 痛いよねぇ…?
そりゃそうだよね。力の限りおもいっきり蹴ってやったから。
「てめぇ……っ」
「あ? あんま調子のってんじゃねーぞ
女が誰でもヤらせてくれるなんて思考、とっととすてるんだな。
また痛い目みるぞ?」
「店員が客に手ぇ出していいんかよッ!!」
男の怒鳴り声に人が駆け寄ってくる。
「杏菜!?」
「どうした? 杏菜」
「…ナメたことぬかしてんじゃねーぞ、てめぇ」
あたしの迫力?に圧されたのか、誰もが黙った。
シーンと静まり返ったなかに、あたしの声だけが響く。
外はうるさいくらい賑やかなのに、ここだけが取り残されたように静かになった。