キミへ

怜衣が言い終わるや否や、あたしの両目からは涙が出ていた。



「あ、杏菜っ?」

「あれ…おかしいなぁ…何であたし…泣いてんだろ……っ」



拭っても拭っても、涙は止まらない。

止まる術を知らないかのように、ポロポロと溢れ出る。



「杏菜…」

「ごめんねっ…何か…よく分かんないけど…勝手に…」



するとあたしは何かに包まれた。

正確には…怜衣に、抱き締められた。



「もういいよ、杏菜」

「……っ」

「怖かったよな?」

「っ!」



こわ…かった…? あたしが…? あんな強気なこと言ってた、あたしが……?



「ごめんな、助けてやれなくて…」

「れ…い…っ」

「俺があん時、行ってたらこんなことにならなかったのにな…」

「…っ」



あたしはゆるゆると首を横に振るしか出来なくて、ぎゅうと怜衣にしがみついた。



「……杏菜」

「…っごめん…ごめんね……っ」

「何で杏菜が謝ってんの」




< 131 / 203 >

この作品をシェア

pagetop