キミへ

怜衣は苦笑いして、あたしの頭を撫でた。



「杏菜、強いなぁ?」

「…何で?」



まだ嗚咽が残りながらもそう聞いた。



「だって、普通何かされたら誰か呼ぶぞ?」

「…ごめんね、あたし普通じゃないからぁ」



そう嫌味っぽく言ったら焦りだした。

それが可笑しくて笑ったら、怜衣が肩を持って体を離した。

もうちょっと、くっついてたかったなぁ…なんて思ったりして……。



「やっと笑った」

「へ?」



怜衣を見れば満足そうに微笑んでいた。

それだけでどきっ、と心臓が音を立てる。

可笑しい可笑しい…どうしちゃったんだ、あたし…。



「な、杏菜」

「ん…?」

「明日、最後の文化祭一緒にまわろうぜ」

「うん」

「絶対だぞ? 約束だかんな」

「わかってるよ」



ニマッと笑って、あたしの目尻に残っていた涙を親指で拭う。

怜衣の行動一つ一つにドキドキしてる自分がいる。

本当…どうしちゃったんだろ、あたし……。




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