キミへ
−怜衣side−

男の怒鳴り声が聞こえてヤバイ、と思った俺はソファーを飛び越えて杏菜の所へ行った。



「杏菜!?」

「どうした? 杏菜」



玲音も心配そうに駆け寄って来た。

杏菜の威圧感がすごくて誰一人、喋る奴いなかった。

つかアイツ…杏菜に迫ってたよな…?

だから、キレたのか…?



「女だからって甘くみてんじゃねーよ。てめぇみたいな奴がいるから悲劇が生まれるんだよ」



そう言ったあと、杏菜は振り向いて頭を下げた。



「お騒がせして申し訳ありませんでした。」



そして頭を上げて今度はにこりと笑って言った。



「どうぞ皆様は引き続きお楽しみ下さい。では、失礼します」



また浅く頭を下げてから教室を出ていった。

俺は男に一発殴ってやろうかと思ったけど、



「てめぇ、何した」



玲音の方が早かった。

だから俺は玲音に男を任せて杏菜のあとを追った。

杏菜がキレたとこ、はじめて見た…

マイペースでおっとりしてる性格だから、あんま怒らないのかと思ったけど……




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