キミへ

やっぱ、温厚そうな奴に限って本気でキレた時が怖ぇんだよな…

俺は裏の教室について、ドアをノックした。



「杏菜?」

「……怜衣?」

「うん」

「あ、と…ちょっと待ってね!」



中からそう聞こえて、もしかして泣いてんのか?って一瞬思った。

けど、杏菜が素足で出てきた時は着替えてたんだって分かった。

つか、冬間近に素足はやべぇだろ……



「あ、ごめん。途中だった?」

「ううん、いいよ別に。入る?」



俺はそれに無言で頷いて中に入った。



「……杏菜?」

「ん〜?」



杏菜の横顔は、どこか悲しげで声を掛けずには居られなかった。



「怜衣? 何?」



何も言わない俺に杏菜は溜め息をついて言った。



「怜衣の悪いとこだよね」

「え?」



なんのことか分からずに目を丸くする俺に杏菜は少しだけ笑った。



「言いたいことあってもハッキリ言わないの。それじゃあ相手に何も伝わんないよ?」




< 135 / 203 >

この作品をシェア

pagetop