キミへ
やっぱ、温厚そうな奴に限って本気でキレた時が怖ぇんだよな…
俺は裏の教室について、ドアをノックした。
「杏菜?」
「……怜衣?」
「うん」
「あ、と…ちょっと待ってね!」
中からそう聞こえて、もしかして泣いてんのか?って一瞬思った。
けど、杏菜が素足で出てきた時は着替えてたんだって分かった。
つか、冬間近に素足はやべぇだろ……
「あ、ごめん。途中だった?」
「ううん、いいよ別に。入る?」
俺はそれに無言で頷いて中に入った。
「……杏菜?」
「ん〜?」
杏菜の横顔は、どこか悲しげで声を掛けずには居られなかった。
「怜衣? 何?」
何も言わない俺に杏菜は溜め息をついて言った。
「怜衣の悪いとこだよね」
「え?」
なんのことか分からずに目を丸くする俺に杏菜は少しだけ笑った。
「言いたいことあってもハッキリ言わないの。それじゃあ相手に何も伝わんないよ?」