キミへ
「本当のこと言って? 誰も杏菜のせいなんて思ってないから」
そう言うと、杏菜の目から涙が零れた。
え…え!? 俺、泣かした…?
1人で焦って杏菜を見た。
「あ、杏菜っ?」
「あれ…おかしいなぁ…」
「!」
口元には笑みがあるのに、目からは大粒の涙がポロポロと落ちる。
「何であたし…泣いてんだろ……」
嗚咽を噛み締めるように、服の袖で涙を拭う。
…あり得ねぇ、あの男。やっぱ俺も一発殴っときゃよかった
「杏菜…」
「ごめんねっ、何か…よく分かんないけど…勝手に……」
俺は杏菜を抱き締めた。
壊れ物を扱うように、そっと、でもここに居る証にぎゅっと。
「もういいよ、杏菜」
「………っ」
「怖かったよな?」
そう問い掛けると、ビクッと肩が揺れた。
「ごめんな、助けてやれなくて…」
ごめんな、俺見てたのに何も出来なくて……。
「れ…い……っ」
俺はまた杏菜を強く抱き締めた。