キミへ

あたしはそれにピタリと動きを止めた。



「な…んで……」

「久しぶりだな、杏菜?」

「………淳(アツシ)」



あたしはそいつをガン睨みした。

なんでコイツがここに……



「…誰?」

「………」

「何? もう他の男とデキたワケ?」

「あ?」



下品な笑いかたをする淳に、あたしはもっと睨んだ。



「…おー、怖い怖い」

「思ってもねークセに」

「怖ぇよ? お前はな」



ニヤリと気持ち悪い笑みを浮かべる。

広瀬 淳(ヒロセアツシ)

この世であたしが一番大っ嫌いな人ナンバー1



「アンタ、何でここにいんの? 彼女はいいワケ?」



嫌味っぽく言ったけど、淳はただ薄ら笑いを浮かべるだけだった。



「アイツとは別れた」

「・・・・・・・・はぁ?」



別れたぁ〜? 付き合ってまだ1ヶ月じゃなかったっけ?



「うそつけ」

「ウソなんかつくかよ。オレがここに来た意味、分かるか? 杏菜」

「・・・・・・・・・。」

「勘のいい杏菜なら、分かるよなぁ〜?」



ニヤニヤと笑う淳。



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