キミへ


「朝からのろけんな」



そんな厳しい言葉が出てきたのはついさっき。

それに怜衣が突っ掛からないわけがない。



「何?悔しいのか?玲音くーん」

「…あ?」



めちゃくちゃ勝ち誇ったような顔で言う怜衣に、玲音はこめかみに青筋を浮かべる。

あ〜、また大変な事になったなぁ…。



「誰がお前ごときに悔しいなんて思わなきゃなんねーんだよ、あほか」

「…んだとコラァ!ごときたァなんだ!!」

「あーあ、始まったよ…」

「おめーら朝から元気だなぁ」



他人事のように見つめるものがあたしを合わせて約、4名。



「杏菜」

「ん?」

「止めて?」



そんな上目遣いで可愛く言われたら……。



「やだ。」

「ええ!?」



断れないのがあたしだけど。こればっかりは無理。

ただでさえ、このあと早退して大嫌いな社交界パーティーに行かなきゃいけないってのに。



「面倒。」

「面倒って…」

「いつもは止めてたのに……」

「じゃあ本音言う。
ケンカすんならあたしの視界に入るな。外で暴れて来い。気がすんだら帰ってこい。以上」

「うわぁお。毒舌のオンパレード!」



そう言うと2人はピタリと動きを止め、大人しく座った。



「あたしが止める前に、ケンカをするな。毎回止めるあたしの身になれ」

「「はい…」」

「特に怜衣。あんたは沸点が低い。」

「すいません……」



ちょこんと椅子に座り小さくなる怜衣。

その姿がかわいいと思ったのはここだけの秘密。



「あっ、杏菜ー!」

「うげっ」



後ろから抱きつかれ、変な声が出た。



「來亞…」

「何でオメーここにいんの?」



教室にいる女子から悲鳴、男子からは鋭い睨み。

でも來亞はそんなのお構い無しでニコニコと笑っている。





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